餅をつくウサギ


太陽系の中で最も地球に近い自然の天体、“月”。
夜空に浮かぶ白く輝く月を眺めていると神秘的な思いがしてくる。

昔から月にはウサギが住んでいて餅をついているなんていう伝承がある。それは月の影のカタチがそのように見えるからだが、古代の人たちも月を眺めて、不思議な思いに駆られたのだろう。
そんな「餅をつくウサギ」の正体を現代の科学の粋を集めた月探査機「かぐや」の観測データから、産業技術研究所などの研究チームが突き止めた。
「かぐや」で測定した光の反射スペクトラムから、月面の約7千万カ所で鉱物の種類を調べたところ、ウサギのカタチをした「プロセラルム盆地」と命名されている部分には、天体衝突時に溶けた物質に含まれる鉱物が分布していることが判明。
それによって「餅をつくウサギ」は、今から約45億〜40億年前に直径300キロ程度の小惑星が月に衝突したことでできたと推測された。

月は原始地球に天体が衝突したことによって飛び散った破片が集まって誕生したという説があるが、月の表面の地質学的な証拠が見つかったことによりそれが月の誕生過程の解明につながり、地球の形成史を知る上で大きな手掛かりになるかもしれない。

科学の進歩により、未知なるものが解明されていく。
それは人類においてプラスになることであろう。ただ、未知なるものは、未知のままである方が人の心を豊かにしてくれる場合だってある。
月を子どもたちと眺めて、「ほら、お月さんにはウサギさんが住んでいて、お天気の良い日はお餅をついているんだよ」
そんな話をする方が僕は好きだな…。




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